RLC回路による2次LPF 






 このページの内容は当たり前のことばかりなので、御存じの方は読み飛ばして最後の結果だけを見てください。今回「秋月のUSB-DACキット」をネットで検索していて、簡単で性能の良いLPFの作例があれば便利だと思ったので、大きなお世話で自分の流儀をまとめてみました。手前みそながら、1〜2段のRC回路よりはかなり効果的だと思います。



 ΔΣ型のDACはかなりの高周波ノイズを発生させるため、ローパスフィルター(LPF)の使用がほぼ不可欠です。LPFには、オペアンプ等のactive素子を使ったactive-LPFと抵抗等でただ減衰させるだけのpassive-LPFがありますが、今回は変な色付けをしたくなかったのでpassive-LPFを採用しました。

 一番基本的なpassive-LPFは、左図のような抵抗とコンデンサーを1つづつ使ったRC回路です。しかしこの回路では1次の減衰率しか得られず、可聴領域を損ねずに1MHz付近のノイズを充分に除去することはできません。これを2段重ねにすると原則として2次の収束性が得られますが、今度は可聴領域が減衰し過ぎるために、遮断周波数を高周波側へシフトするか各段をオフセットにする必要が生じ、結果的に減衰率が下がってしまいます。またその場合には、過度特性にも充分な注意が必要となります。

 右図は、コイルを抵抗と直列に挿入したRLC回路です。この回路では、コンデンサーとコイルの両方のリアクタンスに対する周波数依存性が使えるので、回路定数をうまく選ぶと2段重ねのRC回路よりも効率の良いLPFを作ることが可能です。問題は、(真面目に考えると)数式処理が結構複雑になることですが(?)。


     


*訂正* 下記の式で、周波数と角振動数の関係に間違いがありました。なお減衰率の式は問題ありません。(2012.12.22)

 今回のRLC回路の概略をごく簡単に説明します。詳しいことは専門書で御確認を...。左図のように入力電圧がV0で、電流がiだけ流れていたとします。そうするとV0は、右式のようにR, L, Cそれぞれの両端の電圧の総和となります。一方、出力電圧Vは、Cの両端の電圧に等しくなります。あとはこの微分方程式を、V0として周波数に依存する正弦波を仮定し、ラプラス変換を用いて解いていきます...(以下、省略)

 結局最終的な減衰率は、最後の式のように表されます。高周波では、Lのリアクタンスが増加し、Cのリアクタンスが減少するため出力電圧Vは効果的に2次のオーダーで減衰していきます。

 下の表は、今回用いた回路定数です。これは、20KHzの減衰率が-1db以内、1MHzの減衰率が-50db以上になるように設定した値です。実際には、安価で入手可能なインダクターが限られているので、まずLの値を固定(22μH)して、その条件の基で他の回路定数を決定しました。



 R(抵抗)  12Ω (1/4W) 
 L(インダクター)  22μH (RTP8010-220M-R) 157円 
 C(コンデンサー)  0.47μF (50V) メタライズド・フィルム

 下の2つの図は、今回の回路定数を用いた時の減衰特性です。左が理論値、右が実測です。理論値では、可聴領域の20KHzで-0.8dbの減衰率、ターゲットとなる1MHzで-52.23dbの減衰率が得られます。なお1MHzにおける減衰率は、おおざっぱに見積もって2段RC回路よりも-10db近く良くなります。入力に DAC-U2704を接続した実測では、コンバーターが16bitのため20KHz程度までしか測定できませんでしたが、ほぼ理論値に準じた結果が得られました。残留ノイズ(S/N)は、このLPFを接続することで3mVから0.08mVまで大幅に減少し、充分実用レベルに達しました。





 周波数 (Hz)  減衰率 (db) 
 10K  -0.19
 20K  -0.80
 100K  -13.44
 1M  -52.23

 残留ノイズ (LPFなし)  残留ノイズ(LPFあり) 
 3.0mV  0.08mV

 試聴の結果は、LPFがない時に比べ圧倒的に音が良くなり、高級CDプレーヤーを繋いでいるかのようになりました。また高音のザラついた感じも完全になくなりました。まったくの大きなお世話ですが、LPFを付けていない方は是非試してみてください。音が大きく変わります(勿論良い方へ)。部品代は、高々500円位なので。



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